| ■Online Journal NAGURICOM 沢栄の「白昼の死角」 |
第259章 消費減税の「財源」は見つかるか(下)/「基金」にダブつき資金
(2026年4月26日)
20兆円超える保有金
特別会計剰余金に続き消費減税財源になりうるのが、政府系基金だ。政策目的に活用されずにムダが生じているか、ムダが見込まれる休眠国費である。切り口次第で、減税財源の大いなる確保が可能だ。
基金を減税財源の1つに掲げたのは、中道改革連合だ。新型コロナ対策で急増した基金の過剰な資金保有状況が25年に問題化する。参議院決算委員会は会計検査院に対し国庫補助金で設置された基金に対し会計検査を行うよう要請。これを受け検査院は25年12月、基金の運営実態の検査結果を報告した。
判明したのは、ずさんな計画から基金が使われずに20兆円を超えて積み上がった過大な保有金額だ。報告によると、国庫補助金を原資に国が設置した基金は191、都道府県設置が63、計254基金に上る(2023年度末時点)。補助金の交付額は双方合わせ34.6兆円に及ぶ。交付額全体の8割近くが補正予算として計上され、次いで予備費から支出(ただし都道府県基金は6割近くが当初予算として計上)された。
各府省庁は基金の予算を国会審議に時間をかける当初予算に組み込むことを、敢えて避けているかに見える。25年度補正予算案(コロナ期を除き過去最大の18.3兆円)は25年12月に国会に提出され、衆院でわずか2日間の審議で合意されている。同補正予算で41基金に計2.5兆円が計上された。
基金の保有残高は過去4年で8倍増の総額20.4兆円(うち都道府県は1.6兆円)。基金保有額が1兆円を上回る大型基金は6つある(いずれも経済産業省所管)。だが基金の保有金は積み上がるばかりで、支出額が見込み額の半分に満たない基金が、全体の3割近い49基金、4分の1以下が36基金に上った。
こども家庭庁(23年発足)の保育所の整備、子育て支援向け「安心こども基金」が、その好例だ。21都道府県に対し23年度までの交付金(301億円)のうち使用された金額は18%(54億円)にとどまる。東京都の場合、安心こども基金残高は現在、19億4800万円に上る。だが都は今年3月、国に対し「保育対策総合支援事業費補助金」の追加交付を要求した。別項目で予算請求する構えだ。
委託費を水増し請求
問題の第1は、基金の多くが国庫補助金を溜め込み、保有金を積み増す実態である。が、一概に事業に不熱心とは言えない。基金の支出額は国の基金で23年度5兆円超と4年前に比べ4.5兆円ほども急増している。この増加要因は、大手上位10基金で増え、支出額全体の7割以上を占めたことによる。基金事業の実情は「ごく一部は活発・他は低調」で、ほとんどがまどろみ状態なのだ。この実態を減税財源論議の際、考慮する必要がある。
事業見込み額が減った基金からの国庫返納金が、財源となりうる。過去にもこんな例がある。コロナ金融対策で民間金融機関が行うこととなった無利子・無担保融資(いわゆる「民間ゼロゼロ融資」)により中小企業への債務保証・代位弁済を行った一般社団法人・全国信用保証連合会が25年、使用見込みがなくなった7452億円を国庫に返納している。
もう1つ、注意すべきは府省庁の事業実施に向け基金を設置する天下り先の独立行政法人や公益法人、一般社団・財団法人に巨額の国庫補助金が交付されていることだ。これら外郭団体の保有基金は23年度末に19年度比7.9倍に上る。
この双方の蜜月関係が、基金事業の透明性を妨げ、委託費過大支給の温床ともなる。中小企業支援事業で事務局を委託されたパソナのケースでは、基金事業の再委託を4次にわたって下請け業者に行っていた。
JR東日本の広告子会社「ジェイアール東日本企画」の不祥事が耳目を集めた。2019〜23年度にかけ経産省や国交省など8府省庁の83事業で委託費や補助金を不正受給した。原発立地地域の新事業創出に向けた経済支援などが目的の委託事業だが、人件費として延べ1524人分、約22億4000万円を請求。会計検査院の調べで、実際は延べ371人しか働かず、約19億9000万円の人件費を過大請求したことが分かった。全く関わっていない社員を事業に従事したことにしたり、業務時間の水増しやウソの日誌も作成していた。25年5月、同社社長が引責辞任。その後、宮城県からの委託事業でも同様の人件費の水増し請求が判明した。同社のガバナンス欠如に対し、非常勤取締役を送り込んでいた親会社、JR東日本の管理・監督責任も問われた。
余剰金返納の政府ルールを徹底適用
減税財源を基金の余剰金からどの程度まで捻出できるか―。そのカギは、行政改革に向け政府が実施する全事業に対し決めた行動基準の順守にあるだろう。
政府の行政事業レビュー実施要領によれば、行政事業に対し「事業の厳格な点検を行い、余剰資金の国庫返納を行うこと」とされている。基金の財源は国民の税金が原資の国庫補助金であるから、至極まともな規定だ。この実行を政治が府省庁に徹底させればよい。
基金の国庫返納は、これまでも実施されてきた。2019〜23年度の5年間で見ると、国庫返納は国の基金で1兆2469億円、都道府県の基金で1059億円行われた。返納額最大は新型コロナウィルス感染症基金(経産省所管)の6824億円。返納はいずれも感染症の終息など必要性がなくなったことによる。
先に見たように、基金の多くは資金の余剰状態にある。しかし事業規律は緩い。実績評価に欠かせない事業の「定量的な成果目標」を独自に持たない基金も多々ある。災害対応など定量目標になじまない例外はあるが、都道府県基金で5割近く(23年度末)にも上る。
全国単位で必要な定量的成果目標を持たない都道府県基金はほぼ2割。全国単位の目標設定は各府省庁の仕事だが、徹底されていない。
事業規律に欠かせない、基金の終了時期(新規申請受付を終了する時期)を設定しない基金もある。なかには、事業を終了するはずの時期を延長して新たな事業を始めた基金もあった。このような規律の揺らぎの一因は、基金の設置・運営が各府省庁に一任されているせいだ。主管の役所がそれぞれの仕方で管理するために、基金法人などの内部規律もまちまちとなり、資金のムダが生じやすくなる。この全体の乱れを財務省が財政面から横断的に正していくのが道筋だが、その形跡はない。
これらの基金群のダブ付き資金から減税財源を引き出すことは難儀ではないだろう。いやむしろ基金の入念な事業点検を行い、恒常的に大いなる余剰金の国庫返納分を受け取る仕組みづくりが可能だ。国民会議の論議の深まりが、そのカギを握る。