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沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
第177章 再生エネ普及が遅れる理由/規制改革、法整備が急務

(2018年3月19日) (山形新聞『思考の現場から』3月19日付)


将来の基幹電源と目される再生可能エネルギーは、日本でなぜ欧州のように普及しないのか。日本の全電源に占める再生エネの割合は、2016年度に水力の7.5%を含めなお15.3%にとどまる。 先行する太陽光で4.8%、海に囲まれているのに風力はたったの0.6%、温泉を楽しむ火山国なのに地熱発電はわずか0.7%だ。
再生エネ導入の遅れは、欧州と比べると歴然だ。15年の欧州共同体(EU)平均が29%、うちドイツ29%、英国25%―と欧州では電源の柱に育ってきた。

日本で普及を阻んでいる主因は、高コストだ。価格は下がっているが、海外では日本以上に急ピッチで低落している。太陽光発電でみると、電力会社が事業者から買い取る固定価格買い取り制度(FIT)の導入から6年連続で買い取り価格は下がった。 18年度は大規模な太陽光発電の場合、1キロワット時当たり18円と、14%の引き下げとなる。
制度開始時の40円に比べ、半値以下になる。電力会社から事業者に支払うカネは電気料金に上乗せされるため、買い取り価格の引き下げで国民負担(現在、平均的な世帯で月額686円)は減り、普及に弾みがつく。

価格引き下げが可能になったのは、太陽光パネル設備費用の大幅下落などによる。太陽光の導入割合は、制度前に比べ10倍以上増えた。制度導入の一定の成果が表れてきたといえる。にもかかわらず、海外ではコスト引き下げのスピードが日本よりも速い。 ドイツの太陽光価格は9円(16年)と、日本の半値だ。日本としては昨年秋に始めた太陽光発電の入札制を活用して、欧州より2倍高い工事費などを大幅に引き下げる必要がある。
国際機関の報告によると、太陽光の発電コストは2010年からの7年間に世界平均で73%下落している。

問題は、風力と地熱発電の遅れだ。普及を阻む大きな原因は、コスト高と送電線接続などの規制にある。世界を見回すと、再生エネの支柱は太陽光よりも風力だ。 再生エネ導入が29%と進むドイツでは、うち風力は12%と太陽光6%の2倍。英国は再生エネ25%中、風力は12%と太陽光2%の6倍に上る。
英国と同様の島国なのに、日本の洋上風力発電が普及しないことを海外の発電事業者は訝る。資源エネルギー庁によれば、風力発電の利点は「大規模に開発できれば発電コストが火力並みに下がる」ところにある。「特に洋上では、陸上と比べ好風況で発電効率が高く、大規模な風車の設備が可能」と指摘する。

ところが、風力導入の壁になっているのが風車本体以外の高コストだ。多くは山地に造るが、造成工事や輸送路整備の費用がかかる。送電線の新設費用の一部を大手電力会社に支払わなければならず、この負担もひと際大きい。強い風が吹き、適地とされる東北などで既存の送電線が原発の停止や火力発電所の遊休で「ガラ空き」なのに、大手電力から「満杯」として接続できず、高額な送電線の増強費用を求められるケースが後を絶たない。
電力会社の言い分は「契約している発電設備の分は稼働していなくても空けておく必要がある」というものだ。送電線の利用実態とは関係ない。原発や火力発電所が動かず、送電線が空いていても新規参入の再生エネ事業者は利用できない制度上の不備があるのだ。結果、日本の送電線関連費用はドイツの約3倍にも上る。

経済産業省は遅ればせながら、空き容量を見ながら既存の送電線を有効に利用する英国モデルに倣う取り組みを始めた。まだ試験段階にある洋上風力発電も、普及に向け2030年までに全国5カ所に「促進区域」を設ける新法案を今国会に提出する方針だ。洋上風力は海上に浮かせたり海底の基盤の上に建てた風車で発電し、海底ケーブルで電力を送る仕組み。候補地として実験中の福島に続き青森、秋田、長崎の沖合が有力とされる。

他方、地熱発電は太陽光や風力とは違い、天候に左右されないのが強みだ。日本の地熱の資源量は米国、インドネシアに次ぐ世界3位。地熱発電用のタービンでも三菱重工業、東芝、富士電機など日本企業が世界シェアの大半を占める。
しかし、候補地の大部分は国立・国定公園や温泉地で、発電の適地は見つかりにくい。目下、国は埋蔵調査の段階だが、大規模な開発が難しいとなれば、温泉地向けなどに小規模発電を広げる工夫が必要だ。
再生エネを普及させ、地球温暖化を抑える低炭素社会を実現するには、高コスト構造や運用の壁を解消する規制改革、事業に参入しやすくする法整備が欠かせない。