NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄
■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
第2章 官僚たちの利権追求の道具・公益法人(後編)
 前回、指摘した公益法人JAF(日本自動車連盟)の3つの問題点についてやや詳しくみてみよう。

天下り役員の報酬月額は平均134万円

 まず「莫大な利益をあげているにもかかわらず税金を払っていない問題」であるが、公益法人の有利なところは、株式会社など一般の営利法人が行う事業がことごとく課税対象になるのに対し、法人税や地方税が減免され、地価税も免除されることである。税制も業種を指定して公益法人課税を行っているが、この指定業種に入らない業種は課税を免れるうえ、会員という名目で収入を得て事業活動すれば課税されない。
 公益法人は営利活動を行ってもよいが、利益(余剰金)が出ても少なめに見せようとするから、関係者で分配、もしくは内部留保に回す傾向がある。JAFが儲けていた94年度当時の資料によれば、人件費総額約221億3千万円に対し従業員数は約3千500人、従業員1人当たり平均月収は約52万7千円(平均年齢は31.2歳)。民間の会社より数段高い。

 これに対し役員報酬は常勤役員1人当たり平均1カ月約134万4千円。事業独占の強み、税制優遇や自動車販売店の営業協力(当時、自動車販売店は車を売る際、JAFから手数料を取って顧客に入会を勧めて会員を獲得していた)を考えると、民間企業とは比べものにならないほど順風満帆の経営環境下で、役員、従業員ともに総じて高給を受け取っていた、といってよい。「自動車業界関係者が支配する役員会」は、設立当初から運命づけられた。トップには所管の警察庁と運輸省OBから天下りを受け入れて陣容を強化している。JAFはもともと、運輸省主導でつくられた。東京オリンピックを前に、アメリカ自動車協会(AAA)のような自動車のユーザー団体を新設すべし、との機運が盛り上がっていた頃だ。運輸省は61年に、自動車業界団体の代表を招き、破産状態にあった旧来の社団法人JAAを買収して新たに全国規模の自動車ユーザーの任意団体の設立を要請した。これを契機に63年にJAFが発足し、業界関係者と運輸省(のちに警察庁)が手を結んで事業を立ち上げていくことになる。現在、JAF会長は泉勝・東京日産自動車販売名誉会長。副会長に元警視総監の仁平圀雄と弁護士の木戸孝彦、専務理事に運輸省OB(交通安全公害研究所長)で軽自動車検査協会理事を務めた松波正壽各氏が就いている。業界関係者を軸に所管官庁OBがにらみを利かせる構図だ。
 「不特定多数者の利益実現を図る」という公益法人の目的から逸脱することになった根本原因は、会員制をとったところにある。当初のコンセプトがそもそも公益法人の要件から外れており、のちの「公益法人指導監督基準」に反する結果になるのである。会員制は会員数の増減が収入に直結する。その点で、マイカーを中心とした急速なモータリゼーションの進展は、そのままJAFの収入急増につながった。

近く日程に上る?解散と株式会社化

 だが、JAFの落とし穴はここに潜んでいた。人口の10分の1に当たる1千200万人を超えるまでに会員数が急上昇する過程で、利益も一挙に膨らみ、免税の特典を受ける公益法人にふさわしくない肥満体に変わっていった。増えた資本は自己増殖する。持ち株100%子会社3社も、こうした背景から設立された。モータースポーツ事業への投資も、ロードサービスが目当ての会員の年会費と入会金を原資にしているだけに、背信行為といえるものだ。公益事業を口にしながら、JAFは危なっかしい営利事業に足を突っ込んでいったわけだ。しかもモータースポーツの事業は赤字なのである(96年度決算で収入約7億円に対し支出は約9.3億円)。 公益法人JAFの解散と株式会社化が遠からず日程に上ってくる可能性は小さくない。


[ Kitazwa INDEX ]


ご意見・お問い合わせトップページ

Copyright NAGURICOM,2000