■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
随意契約で天下り維持の狡猾/無責任国家の正体(8)

(2011年12月28日)

責任を取らない官が牛耳る「無責任国家」―。その手練手管の術に「随意契約」がある。省庁は天下りを永続させる狙いから、天下り先法人に独占的な利権を与える術を活用してきた。 これにより、最大の「天下り受け皿」である公益法人が、税金を使う行政委託事業の「最大の受益者」となる。
「随意契約」とは、競争によらずに初めから相手先を特定する契約である。法人側は随意契約で、補助金や委託費を毎年度、国から受け取ることになる。 役所側は国費で事業費を賄う法人に、安心して天下ることができる。随意契約で、役所と天下り先法人との結び付きは、一段と堅固になるのだ。

筆者は昨年9月、長妻昭厚労相(当時)の指名で「厚生労働省独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会」の委員となり、座長として天下り問題に関わった。 同省の内部資料「国等との関係が強い所管公益法人一覧」によれば、同省が事業委託した関係先はすべて天下り先で、計139法人。 委託契約は法令で指定されていたり、当初から決まっている事実上の随意契約だ。厚労官僚が本音を明かした。
「これらは先輩OBがいる法人で、切りにくい」
ところが、随意契約というのは法律上は本来、「例外的」なのだ。各省が契約を結ぶ場合は、一般競争入札が原則なのである。会計法によると―。
「(例外的な場合を除き)公告して申し込みをさせることにより競争に付さなければならない」(第29条の3)」
例外的な場合とは、決壊した橋を急いで修理しなければならない非常時とか、契約額が少ないようなケースだ。だが、実態は各省とも「一般競争入札が原則」を無視して、ことごとく随意契約で業務を委託してきた経緯がある。

「見直し計画」後も実態変わらず

契約の不透明性や高い契約高が批判を受け、政府は06年に「随意契約見通し計画」を公表して公共調達の適正化に乗り出す。 当時、会計検査院が随意契約について検査したところ、07年4月時点で国家公務員1万人弱が天下りしている962の公益法人に対し、随意契約で3200億円超を支払っていたことが判明した。 支払先の1公益法人当たりの平均天下り者数は10.3人。「天下り受け皿」の大きい先に、国費を集中投入していたのだ。
その後、各種調査によれば、各省庁とも競争契約の比率を高め、随意契約は減っていったはずだった。ところが、実態はほとんど変わっていない。会計検査院調査官が語る。
「競争入札に切り替えても、1法人しか応札せず、これに決まった『一者応札』が大部分。『経験者しか入札できない』条件にしたり、契約内容を不明確にしたり、公告期間をわざと短くしたりして入札参加を妨害し、従来の業者しか応札できないようにするわけです」

会計検査院が11月に公表した検査報告で、インチキ競争契約が明るみに出た。林野庁は植栽、間伐などの造林事業の実施に際し、競争入札の導入を推進するよう都道府県を指導するなどの措置を講じた、としていた。 が、検査したところ、競争入札に切り替えていたのは宮崎県だけ。実情は随意契約が件数、事業費とも48.5%を占めた。検査院は、仮に随意契約を競争入札に代えたとすれば、国庫補助金を1.6億円相当低減できた、と試算する。
政府は消費増税の前に、こういうインチキとムダ遣いをなくさなければならない。