■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
<緊急速報8> 東電・事故処理プランの欠陥

(2011年4月18日PM3:30)

東京電力は17日、福島第一原発の事故収束に向けた2段階から成るロードマップを発表した。
事故発生から1カ月余り。遅ればせながら、ようやく作られた収束のシナリオだが、大きな欠陥がある。それは「責任逃れ」が可能となるよう、2カ所で巧みに工作されてあることだ。

1つは、解決の究極目標である「放射性物質の封じ込め」を明記していない。「基本的な考え方」をみると、「原子炉及び使用済み燃料プールの安定的冷却状態を確立し、放射性物質の放出を抑制する・・・」ことを目標としている。放出を「止める」のではない。抑える、「抑制」である。ということは、微量な程度なら放出はやむを得ない、ということだ。
これでは自分たちの業務上過失が疑われている大事故に対し、事態の完全復旧はないことを告知し、政府もこれを承認したということではないか。このまやかし目標を即刻、「放出の完全防止」に改め、その実行時期を早めなければならない。

もう1つは、大いにあり得る最悪の大惨事に対するシナリオが全く用意されていないことだ。これは「想定外」の事態と考えているわけでなく、当局・東電が責任追及を恐れ、故意に黙殺して明記を避けたのだろう。
考えられる最悪の事態とは、この国の元原子力安全委員長ら16人もの原子力専門家が3月30日に発表した「特に懸念される事態」を指す(北沢栄の福島第一原発緊急速報(6)を参照)。メルトダウン(炉心溶融)が時間とともに進み、圧力容器を溶かして格納容器も破壊したり、水素ガスの爆発による格納容器自体の爆発による放射性物質の大量放出の危険である。
この危険を現実化させないために、政府はあらゆる手を尽くさなければならないが、他方で最悪ケースへの備えを周辺住民、国民、世界に知らせる義務がある。

「みんなで頑張ろう」式の掛け声で忍耐強く我慢する一般のニッポン国民は、ここで「我慢」から「怒り」に感情をスイッチしなければならない。冷静に立ち止まって考えてみよう。一体、こんなひどい原発人災を引き起こしたのは誰の責任か、と。「原子力村」の面々の責任逃れをこれ以上許さず、責任をしっかり追及する一種の“ニュルンベルク裁判”がいま、必要なのだ。
大津波に触発されたこの歴史的惨事は、なお不気味に進行中だが、ここで中間総括しておく必要があるだろう。