■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
第156章 国民生活、再貧困化へ/民間給与再び減少

(2012年10月24日)

2008年秋のリーマン・ショックに続く昨年3月の東日本大震災・原発事故の影響で、国民の暮らし向きは一段と厳しくなった感が深い。 最近発表された政府の各種統計調査によると、国民生活は昨年来、「再貧困化」の方向に後退した。

2年ぶり悪化

民間企業のサラリーマンに昨年1年間に支給された平均給与(賞与を含む)は409万円で前年を0.7%、3万円下回ったことが、国税庁の「民間給与実態統計調査」で分かった。前年は3年ぶりの増加だったため、わずか1年でまたも悪化した。
この調査は給与所得者のうち民間企業で働くパートや非正規労働者を含む従業員、役員が対象で、民間の給与実態を知る上で基幹統計となっている。2011年分の調査結果によると、給与所得者5427万人のうち1年を通じて勤務した給与所得者は4566万人。
男女別に見ると、男性の給与所得者が前年比2万人増の2731万人、女性が12万人増で過去最多の1835万人に上った。年間平均給与は男性が504万円で前年比0.7%減、女性が268万円で同0.5%減。給与の男女格差は1.9倍と依然大きく、給与の分布では男性の最多層が「年間300万円超400万円以下」、女性が「100万円超200万円以下」となっている。
全体では最多層の「300万円超400万円以下」が838万人と18.4%。「300万円以下」が1865万人と全体の4割を占める一方、「1000万円超」が全体の3.9%の178万人と若干増え、前年より給与格差が開いた。


格差拡大続く

注目すべきは、前年の2010年がリーマン・ショックから立ち直って平均給与は1.5%増と3年ぶりに伸ばした後、「3.11」の影響から再び落ち込んだことだ。これで平均給与は過去10年間に454万円から409万円へ12%減ったことになる(図)
給与の下落傾向は平均467万円を付けた97年をピークに続いている。長期デフレ不況を象徴する現象だ。しかも給与格差の拡大傾向は、好転の兆しが見えないばかりか、最底辺層(年間給与100万円以下)はむしろ前年より32万人増え、393万人に膨らんだ。 この格差の実態は多層的で、男女間、企業規模間、業種間、正規雇用と非正規雇用間、世代間にわたる。同調査で明らかになった企業規模別実態では、資本金2000万円未満の株式会社の場合、平均給与は352万円(男性424万円、女性232万円)なのに対し、資本金10億円以上の株式会社では572万円(男性680万円、女性308万円)、1.6倍と開いている。
業種別では、平均給与が最も高いのが電気・ガス・熱供給・水道業など公益事業系の713万円で、800万円超の給与所得者が36.1%を占める。次いで金融業、保険業の577万円、うち800万円超が21.4%。最も低いのは宿泊業、飲食サービス業の230万円、うち100万円以下が28.0%に上る。政府の保護・規制下に置かれている電力・ガス会社や銀行が最上位を占めている構図だ。


負の連鎖

サラリーマンの給与所得減は、税金と社会保険料を差し引いた手取りの可処分所得を大きく引き下げ、消費支出の減少へはね返る。なぜなら、税、社会保険料ともに年々増えているからだ。これが経済の「負の連鎖」となる。
国民の負担はジワリと増えている。昨年を見ても所得税が年少扶養親族に対する扶養控除や16歳〜19歳未満の者に対する扶養控除の上乗せ部分の廃止(1月)、健康保険(協会けんぽ)料金の引き上げ、本人負担分が全国平均で4.6%から4.75%へ(3月)、介護保険第2号(40歳〜65歳未満)保険料率の引き上げ、本人負担分1000分の7.5から7.55へ(3月)、厚生年金保険料率の引き上げ、本人負担分8.029%から8.206%へ(9月)―などと負担増が続いた。
この結果、昨年の勤労者世帯の可処分所得、消費支出ともに前年より低下。総務省が今年2月に発表した2011年の「家計調査報告」によると、勤労者世帯の可処分所得は38万836円で、前年より名目で2.3%減少、実質で2.0%減少した。消費支出は27万5991円で、前年に比べ名目2.6%の減少、実質2.3%の減少となった。
野田政権は先に、14年4月から消費税の5%から10%への段階的引き上げを決めている。民間サラリーマンの“懐事情”は、このまま収入が低迷すれば一層厳しくなるのは必至だ。
とりわけ生活苦が予想されるのは、臨時やパートを含む非正規雇用者である。非正規雇用者は昨年は全雇用者(役員を除く)の35%(総務省調べ)と、全体の3分の1を上回るまでになった。

厚労省の「平成22年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」(昨年8月発表)によれば、2010年9月の1ヵ月間に支払われた賃金総額(税込み)は正社員では「20〜30万円未満」が最大比率の36.6%。次いで「30〜40万円未満」が25.5%となっている。
一方、パートタイマーでは「10万円未満が51.2%と最も高い割合。「20万円未満」を合わせると9割超に上る。パートで生活をつないでいる限り、年収100万円そこそこが大半であることを物語る。
契約社員、派遣労働者、嘱託社員の場合はパートよりは多いが、「10〜20万円未満」が最も高い割合を占める。
さらに不吉な兆候は、今春の大学卒業者約56万人の中に安定した仕事に就いていない者が「4人に1人」近くに上っていることだ。
文部科学省が8月に発表した学校基本調査によると、非正規雇用やパートなど不安定な仕事にしか就けなかった大卒者は22.9%(5月1日現在)に上った。このほか就職も進学もしなかった大卒者が約6%に当たる3万3000人以上もいる。ニート(若者無業者)になる恐れが強い。
「近いうちに」行われるはずの総選挙。そこで決まる次の新政権は、悪化する国民生活を好転させなければならず、何より日本経済の活力低下の元凶と見られる「デフレ」と「超円高」の解消を急ぐ必要がある。



(図)
(出所:国税庁「民間給与実態統計調査」)